植物療法の本場フランスなどで学んだ知識と、生理学に基づいた確かなアロマテラピーをお伝えします。まずは無料講座から。
注意が必要な精油
このページの目次
◆芳香分子のグループについて
◆フェノール類を多く含む精油
◆アルデヒド類を多く含む精油
◆ケトン類を多く含む精油
◆光毒性のある精油
◆乳幼児に注意が必要な芳香分子
◆アレルゲンになる可能性のある芳香成分
芳香分子のグループについて
精油には様々な芳香分子が含まれます。それらの芳香分子が組み合わさって、それぞれの精油の香りが出来上がります。例えば、レモンなどの柑橘系の精油に含まれる「リモネン」やラベンダーに含まれる「リナロール」なども芳香分子の一つです。それらの芳香分子は、分子の構造などで、~~類とグループ分けされています。リモネンであれば「モノテルペン炭化水素類」、リナロールであれば「モノテルペンアルコール類」の仲間というように。
それらのグループに属する芳香分子には、共通の特徴があります。こちらのページでは、特に毒性や皮膚刺激の強いグループとそのグループに含まれる芳香分子をご紹介します。これらの精油は使い方によっては、とても有用ではありますが、使用の際には特に注意が必要です。
フェノール類を多く含む精油
フェノール類はとても強い抗感染作用のある芳香分子のグループとして知られています。ベンゼン環(二重結合のある六角形の部分)に水酸基(OH)が付いている芳香分子のグループで、芳香分子名の最後が~~オールで終わります。(フェノール以外もオールで終わるものもあります)
チモール、カルバクロール、オイゲノールなどがこのグループに含まれます。
経口摂取による肝臓毒性と皮膚や粘膜への刺激作用がありますので、長期間の使用は避け、必ず希釈して使用します。皮膚や粘膜への刺激がありますので、芳香浴や吸入には、基本的に使用しません。
フェノール類を多く含む精油は、5歳以下の乳幼児は使用を避けた方が良いと言われています。
余談ですが、チモールは、抗感染作用や抗炎症作用があるため、市販の鎮痛外用剤や洗口液に使用されていますし、オイゲノールは歯科領域で使用されています。フェノール類の芳香分子も上手に使えば有効に使える芳香分子でもありますが、使い過ぎると体に負担がかかりますので、注意が必要です。
【フェノール類を多く含む精油例】
■チモール
・タイム チモール精油(Thymus vulgaris BS Thymol)
■カルバクロール
・タイム カルバクロール精油(Thymus vulgaris BS Carvacrol)
・オレガノ精油(Origanum vulgare、Origanum compactum)
・マウンテンセイボリー精油、ウインターセイボリー精油(Satureja montana)
・サマーセイボリー精油(Satureja hortensis)
■オイゲノール
・クローブ精油(Syzygium aromaticum)
・シナモン精油(葉)(Cinnamomum verum)
こちらに記載しているのは、代表的なものだけです。
タイムなどのケモタイプのある精油に関しては、フェノール類を含まない精油も存在します。
学名の後にBS(Biochemical Specificityの略)やCT(Chemotypeの略)と書いて特徴的な成分が書かれることが多いです。
アルデヒド類を多く含む精油
アルデヒド類は、鎖状炭化水素または環状炭化水素にアルデヒド基(CHO)がつく芳香分子のグループで、芳香分子名の最後に~~アールとつくものが多いです。
このアルデヒド類の中の、テルペン系アルデヒド類に、シトラール(ネラールとゲラニアールの混合物)、シトロネラールなどがあります。テルペン系アルデヒド類には、皮膚刺激がありますので、皮膚塗布する場合は、必ず希釈して使用します。
他にもフェニルプロパノイド系アルデヒドというグループがありますが、その中にシナモン精油に含まれるケイヒアルデヒド(シンナムアルデヒド)という芳香分子があります。こちらの芳香分子は、フェノール類のように、抗感染作用がとても高いのですが、皮膚や粘膜への刺激作用がかなり強いので、長期間の使用は避け、必ず希釈して使用します。
また、ケイヒアルデヒドを多く含む精油は、5歳以下の乳幼児や、妊娠中、授乳中の方は使用を避けた方が良いと言われています。
どちらのアルデヒド類も芳香浴に使用する際には、少量使用に止めるなどの注意が必要です。殺菌や空気清浄を目的にこれらの成分を拡散させる場合は、拡散後、しばらく時間を置き、その後換気をしてから入室すると安全です。
【アルデヒド類を多く含む精油例】
■シトラール(ゲラニアール&ネラール)
・レモングラス精油(Cymbopogon citratus)
・リトセア精油(Litsea cubeba)
・レモンバーベナ精油(Aloysia citrodora)
■シトロネラール
・ジャワシトロネラ精油(Cymbopogon winterianus)
・コリンビア・シトリオドラ(レモンユーカリ、ユーカリ・シトリオドラ)(Corymbia citriodora、Eucalyptus citriodora)
■ケイヒアルデヒド(シンナムアルデヒド)
・シナモン精油(樹皮)(Cinnamomum verum)
・シナモンカシア精油(Cinnamomum cassia)
ケトン類を多く含む精油
ケトン類は、鎖状炭化水素または環状炭化水素にケトン基(C=O)がつく芳香分子のグループで、芳香分子名の最後に~~オンとつくものが多いです。とても有用な芳香分子が含まれるグループなのですが、神経毒性や堕胎作用がある芳香分子もあるため、使用には注意が必要です。
ケトン類は体内で代謝(解毒)され、排泄されるのに時間がかかるため、少量ずつ摂取したとしても、体内に蓄積され、神経毒性を発現する可能性があります。特に飲用が危険だと言われています。
ケトン類を多く含む精油は、長期使用や大量使用を避け、期間限定で使用するようにします。特に、妊娠中、授乳中、ご高齢の方、てんかんの方、乳幼児は使用を避けてください。
ケトン類の芳香分子としては、カンファー(ボルナノン)が有名ですが、これは日本では、樟脳と呼ばれており、昔からあるタンスの防虫剤の香りです。タンスの防虫剤の香りを嗅いだ妊婦さんに問題があったという話は聞かないように、この香りを少量嗅いだ程度で、すぐに問題が起こるわけではありませんが、ケトン類を多く含む精油の使用時は注意が必要です。
カンファーは、痙攣を引き起こす可能性があり、特に乳幼児に使用した場合に発作を起こした報告が数例ありますので、3歳までの使用は避け、7歳ぐらいまでは、少量使用にとどめておきましょう。
【フランスで店頭販売禁止の精油】
ケトン類のピノカンフォンやツヨンは、特に危険性が高い芳香分子のため、この芳香分子を含む精油はフランスでは店頭販売が禁止(医療従事者は使用可能)になっています。
日本では、これらの芳香分子を含むヒソップ精油(Hyssopus officinalis)やセージ精油(Salvia officinalis)を購入することが可能ですが、知識のないままに使用することは危険が伴いますので、初心者の方は基本的に使用は避けましょう。
【ケトン類を多く含む精油例】
■ピノカンフォン、イソピノカンフォン
・ヒソップ精油(Hyssopus officinalis)
■α-ツヨン、β-ツヨン
・セージ精油(Salvia officinalis)
・ホワイトマグワート精油(Artemisia herba alba)
・アルボレセンスマグワート、ツリーアルテミシア(Artemisia arborescens)
・ニオイヒバ、ツーヤ(Thuja Occidentalis)
■カンファー(ボルナノン)
・ホワイトマグワート精油(Artemisia herba alba)
・アルボレセンスマグワート、ツリーアルテミシア(Artemisia arborescens)
・ローズマリー カンファー精油(Rosemarinus officinalis CT camphor)
・スパイクラベンダー精油(Lavandula latifolia)
■d-カルボン
・キャラウェイ精油(Carum carvi)
・ディル精油(種)(Anethum graveolens)
■l-メントン
・ペパーミント精油(Mentha×piperita)
・コーンミント精油(Mentha arvenis)
■アトラントン
・アトラスシダーウッド精油(Cedrus atlantica)
こちらに記載しているのは、ケトン類を含む代表的なものだけで、ケトン類を含む全ての精油を記載している訳ではありません。こちらに記載している精油でもケトン類の含有割合が少ない場合や、他の精油とブレンドする場合、期間限定で少量使用する場合など注意して使用することはできます。
光毒性のある精油
精油の中には、光毒性を持つものがあります。光毒性のある精油を安全濃度以上に塗って紫外線に当たると、皮膚に慢性的な日焼けによる損傷を引き起こす場合があります。特にベルガモットに含まれるベルガプテンが光毒性のある成分として有名です。下記の精油をIFRA推奨最大濃度以上に塗布した場合、12~18時間は紫外線にさらされるべきではないと言われています。(洗い流さない使用方法の場合)
また、IFRA推奨最大濃度は、ベルガモット精油が0.4%、クミン精油が0.4%ですが、これらをブレンドして使用する場合、それぞれを合わせて0.4%濃度までにする必要があるとも言われています。
例:ベルガモット精油0.2%、クミン精油0.2%など
オレンジやレモンなどの柑橘類は、一般的に「圧搾法」と呼ばれる方法で果皮に含まれる精油成分を抽出しますが、柑橘類でも「水蒸気蒸留法」と呼ばれる方法で抽出されることもあります。抽出方法によって、含有成分が変わってきます。
例えば、下記のビターオレンジ精油(圧搾)と書かれている場合は、圧搾法によって抽出された成分に光毒性のある成分が含まれるということです。同じ植物からプチグレン・ビガラード精油(ビターオレンジリーブス精油)が抽出されますが、こちらは葉を水蒸気蒸留したものですので、光毒性はありません。
また、柑橘類を圧搾法で抽出した精油の全てに光毒性があるわけでもありません。
アブソリュートと付いているのは、溶剤抽出された精油ですので、水蒸気蒸留法などで抽出された精油とは成分が違ってきます。
【光毒性精油(エッセンス)として知られるもの】
精油の種類とIFRA推奨最大使用濃度(洗い流さない使用方法の場合)
・ビターオレンジ精油(圧搾)(Citrus aurantium):1.25%
・グレープフルーツ精油(圧搾)(Citrus paradisi):4.0%
・フィグリーフアブソリュート(Ficus carica):皮膚への使用は一切避ける
・ベルガモット精油(圧搾)(Citrus bergamia):0.4%
・マンダリンリーフ精油(Citrus reticulata):0.17%
・ライム精油(圧搾)(Citrus × aurantiifolia):0.7%
・ルー精油(Ruta graveolens):0.15%
・レモン精油(圧搾)(Citrus limonum):2.0%
・アンジェリカルート精油(Angelica archangelica):0.8%
・クミン精油(Cuminum cyminum):0.4%
・バーベナ精油(Aloysia citrodora、Aloysia triphylla):皮膚への使用は一切避ける
・タジェット精油(Tagetes minuta):0.01%
・タジェットアブソリュート(Tagetes minuta):0.01%
・ローレルリーフアブソリュート(Laurus nobilis):2.0%
参考:精油の安全性ガイド 第2版 ロバート・ティスランド /ロドニー・ヤング 著 2018/09/25
※IFRA(International Fragrance Association 国際香粧品香料協会)とは
香料を安全に使用するための国際的な基準を定める機関です。